緊張…しているかと聞かれたら、そりゃ勿論緊張しているが。
それでも、ようやく停滞していたコマが前に進んだ…という安心感はあった。
そろそろ、この広々としたファニレス王宮も、息苦しく感じていたところだったからな。
初日にアレがあって以来、俺とルイーシュは、王宮の外には出ていなかった。
…そんな気分になれなくてな。
俺達が紫水晶の間に閉じこもっているのを見て、案内人がキルディリア魔王国の観光地に案内する、と申し出たのだが。
とてもじゃないけど、優雅に観光なんてする気になれねぇよ。
で、仕方なく王宮に引きこもっていた。
外国に来てまで、ひきこもり。
そして今か今かと、イシュメル女王が王宮に戻ってくるのを待っていた。
ようやく、その時がやって来たのだ。
「どうぞ、こちらです」
「…どーも」
俺達は揃って、ファニレス王宮の王の間にやって来た。
豪奢で重厚な扉を、左右に控える使用人達が同時に開いた。
…その向こうには。
「…おぉ。来たか」
クリスタルで出来た、荘厳な玉座に。
足を組んで、優雅に座る…威厳のある女性。
あれが…イシュメル女王、か。
「…」
写真では見たことあったけど、実物を見るのは初めてだな。
…さて。いよいよ、スパイ任務の本格始動である。
「どうした。くるしゅうない。そんなところに突っ立ってないで、もっとこちらに寄れ」
玉座に座ったイシュメル女王は、房飾りのついた扇をこちらに向け、手招きした。
…悪いけど、俺もルイーシュも、これまで会ったことのある女王と言えば、ルーデュニア聖王国のフユリ様だけなんだよな。
彼女は、俺みたいな礼儀作法の欠片も知らない奴でも、ルイーシュみたいな慇懃無礼人間にも、平等に接してくれる心の広さがある。
それ故に俺は、王族相手の礼儀とか、マナーとか、そういうのって全然分からないんだよな。
出来るだけ礼儀正しく…するつもりではいるけれど。
そんなに上手く振る舞える気がしない。
「この無礼者!」…って言われたらどうしよう。
…まぁその時は、その時ってことで。
「おぬしら、一週間前にルーデュニア聖王国から来たのじゃったな?」
「…はい」
「待たせて悪かったのう。何せ、我が国はアーリヤット皇国での揉め事が収まったばかりじゃ。新しい領土と化した彼の国に、新しい治世を行わねばならぬ」
「…」
「じゃが、それもようやく一段落した。そこで、わらわもこうして、王宮に戻ってこられたという訳よ」
アーリヤット皇国が…新しい領土。
この女王は…やはり、本当にアーリヤット皇国を自分の国にしてしまうつもりだったのだ。
「…それじゃあ、アーリヤット皇国は…今は…」
「訂正せよ。この世界に、今アーリヤット皇国などという国はない。あの場所は、キルディリア魔王国、アーリヤット領じゃ」
居丈高に、イシュメル女王はそう宣言した。
アーリヤット皇国…じゃ、ない。
キルディリア魔王国、アーリヤット領。
なんてことだよ。
ナツキ様の国が…。アーリヤット皇国が…今や、国ではない。
キルディリア魔王国の、領土の一部になってしまったのだ。
「なんぞ、不満なことがあるか?」
イシュメル女王は、俺の顔色を見てそう尋ねた。
おっと…すまない。不機嫌が顔に出てたか?
「いえ…そんなことはありません」
「ふむ?」
「…アーリヤット皇国は魔導師の存在を軽んじ、世界魔導師保護条約などという…魔導師に不平等な条約を世界に課そうとしていました。…当然の報いです」
と、俺は言った。
それでも、ようやく停滞していたコマが前に進んだ…という安心感はあった。
そろそろ、この広々としたファニレス王宮も、息苦しく感じていたところだったからな。
初日にアレがあって以来、俺とルイーシュは、王宮の外には出ていなかった。
…そんな気分になれなくてな。
俺達が紫水晶の間に閉じこもっているのを見て、案内人がキルディリア魔王国の観光地に案内する、と申し出たのだが。
とてもじゃないけど、優雅に観光なんてする気になれねぇよ。
で、仕方なく王宮に引きこもっていた。
外国に来てまで、ひきこもり。
そして今か今かと、イシュメル女王が王宮に戻ってくるのを待っていた。
ようやく、その時がやって来たのだ。
「どうぞ、こちらです」
「…どーも」
俺達は揃って、ファニレス王宮の王の間にやって来た。
豪奢で重厚な扉を、左右に控える使用人達が同時に開いた。
…その向こうには。
「…おぉ。来たか」
クリスタルで出来た、荘厳な玉座に。
足を組んで、優雅に座る…威厳のある女性。
あれが…イシュメル女王、か。
「…」
写真では見たことあったけど、実物を見るのは初めてだな。
…さて。いよいよ、スパイ任務の本格始動である。
「どうした。くるしゅうない。そんなところに突っ立ってないで、もっとこちらに寄れ」
玉座に座ったイシュメル女王は、房飾りのついた扇をこちらに向け、手招きした。
…悪いけど、俺もルイーシュも、これまで会ったことのある女王と言えば、ルーデュニア聖王国のフユリ様だけなんだよな。
彼女は、俺みたいな礼儀作法の欠片も知らない奴でも、ルイーシュみたいな慇懃無礼人間にも、平等に接してくれる心の広さがある。
それ故に俺は、王族相手の礼儀とか、マナーとか、そういうのって全然分からないんだよな。
出来るだけ礼儀正しく…するつもりではいるけれど。
そんなに上手く振る舞える気がしない。
「この無礼者!」…って言われたらどうしよう。
…まぁその時は、その時ってことで。
「おぬしら、一週間前にルーデュニア聖王国から来たのじゃったな?」
「…はい」
「待たせて悪かったのう。何せ、我が国はアーリヤット皇国での揉め事が収まったばかりじゃ。新しい領土と化した彼の国に、新しい治世を行わねばならぬ」
「…」
「じゃが、それもようやく一段落した。そこで、わらわもこうして、王宮に戻ってこられたという訳よ」
アーリヤット皇国が…新しい領土。
この女王は…やはり、本当にアーリヤット皇国を自分の国にしてしまうつもりだったのだ。
「…それじゃあ、アーリヤット皇国は…今は…」
「訂正せよ。この世界に、今アーリヤット皇国などという国はない。あの場所は、キルディリア魔王国、アーリヤット領じゃ」
居丈高に、イシュメル女王はそう宣言した。
アーリヤット皇国…じゃ、ない。
キルディリア魔王国、アーリヤット領。
なんてことだよ。
ナツキ様の国が…。アーリヤット皇国が…今や、国ではない。
キルディリア魔王国の、領土の一部になってしまったのだ。
「なんぞ、不満なことがあるか?」
イシュメル女王は、俺の顔色を見てそう尋ねた。
おっと…すまない。不機嫌が顔に出てたか?
「いえ…そんなことはありません」
「ふむ?」
「…アーリヤット皇国は魔導師の存在を軽んじ、世界魔導師保護条約などという…魔導師に不平等な条約を世界に課そうとしていました。…当然の報いです」
と、俺は言った。



