人間恐怖症の私は、氷と月のような君と共に




いつまでも、死と向かい合わせなのは治らなかった。

……でも、とある人と出会って、違くなった。



彼と出会ったのは、菜々と出会った頃。


——中1のある日、だった。


雨が降っている時に、傘を1人さしていない人を見つけた。

私はその人に、傘を差し出した。


たった、それだけだったのに。

『蒼空』

『えっ⁉︎ どうして私の名前と……住所を⁉︎』

普通に一瞬ストーカーかと思った。

でも、彼はこう言ったんだ。

『わざわざ聞かなきゃいけないお前らと一緒にすんなよ?』

その口振りからして、本が大好きな私は瞬時に察した。

こ、この人……俺様って人だ……! そして、ヤバい人だ……!


絶対ストーカーだ……!


『あ、あの、もう行きますっ……』


顔を見ないようにしながら通り過ぎようとした時、腕を掴まれた。

『なっ……やめて、くださ……』

『ふーん、なるほど』


な、何が……⁉︎ どうしよう、怖くなってきた……!

『お前、俺が見えんの?』



………………………はい?

『も、もちろん……』


『ふーん……あんた、何者?』

『え? 見た通り……普通の中学生、ですけど……』

すっごく変な人だ。変人っ……。

『俺が見えんのなんて……誰もいないはずだけど?』


『……え?』

どういう、こと……?

『俺、普通の人間に見えるか?』

『は、はい……』

『ふざけんなよ、お前らと同じにすんな』


あのー……そういうの、逆ギレって言うんですよ……?

彼は見た感じ高校生くらいで、背が高い。まあ、私がチビだからだけどっ……。

『俺……人じゃない』


『え⁉︎』

一瞬、ファンタジーの世界へワープしたかと思った。

『そ、それは……擬人化、ってことでよろしいですか……?』


『敬語、ウザい』