わたしのスマホくん


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お母さんたちが帰宅して、夕ご飯を済ませた後──わたしとヒロはヒロの部屋に待機してもらっていたスマホくんたちのもとへ。


「……そら戻っ、ん!!」

部屋に入った途端、座っていた桃李くんが立ち上がりかける。だけど今の状況を考えるとまずい。それを分かっているから、そばにいた碧くんが桃李くんの口をふさぎ阻止。

「今はだめだよ桃李。静かにしておかないと」
「そうだった……ごめんー。ありがと、あお」
「うん。……おかえり、青空。ヒロも」

床に座りなおし、わたしとヒロも同じように座れば、明華くんが不安そうに口を開いた。

「お母さんたちには、バレなかったか?なるべく静かにしてようって話はしてたんだけど……」
「今のところは。ぼくも姉ちゃんも普段通りにしてたしね。なにもかんづかれてはいないよ。あくまでも、今は。お前たちは?スマホに戻ることはやっぱ無理なの?」

ヒロがたずねるも、スマホくんたちは静かに首を横に振る。

「ヒロが部屋を出ていってから、僕たち全員試し続けてるけど、全然だめ。だれも戻る気配ない」
「こ、このまま自分たち戻れなかったらどうなるの?絶対にバレず過ごしていくことなんてできっこない……」

戻れるか、どうか。
戻れなかったら、どうするか。
解決策がないから、重々しく部屋に沈黙がおとずれる。