わたしのスマホくん


「え、あ、あのっ……」

言いたいことがいっきに頭から消え去って、真っ白だ。
もう下まで逃げる?外に出ればまだ安全なんじゃ……でも相手は男の子。下まですら逃げ切れる自信はない。
どうするっ考えろ考えろ、わたし──!!


「……あのさ」
「っ!?」

男の子がしゃべっただけでかじょうに驚いてしまったわたしは後ろに下がったはずみで、壁に頭をぶつけた。

「いったぁ……」

後頭部に結構(けっこう)なダメージ……。

「大丈夫?」

しまった……!!しゃがんだせいで、男の子がこんなそばまで来ちゃった。

「だ、だい、大丈夫っ……なので……!!」

同じ目線にまた動揺してしまうも、男の子の表情はずっと真顔のまま。

「ぼくは新星碧(にいぼしあお)

「に、にいぼし……?」
「うん。碧って呼んでくれるとうれしい」

薄っすらとほほえまれ頷かれるも、わたしの知り合いにも友達にも、新星という子は居ない。

「ど、どこから入ったの……?」

窓は開けてないし、ここは二階だから楽に入れる高さじゃないはず。
だけど、わたしの質問に新星……碧くんは不思議そうな顔をした。

「入ったのは玄関だよ。君と一緒に入ったから」
「え……?」

わたしと一緒に?

いやいや!お父さんは置いといて、男の子はヒロしか居ないし、こんな……

かっこいい人と一緒に家に帰るなんてことあり得ない。
チラチラと目の前にいる碧くんを見ながら考えていれば、

「ぼくは君のスマホだよ」
「……へ?」

碧くんは不思議なことを口にした。