「ヒロ、わたしのスマホ知らない?」
「知らないよ。ぼくはいつもゲームとか動画とかでお母さんの使ってるの知ってるでしょ。なんで姉ちゃんの使わないといけないのさ。それにぼく今帰ってきたし」
「そう、だよね。ごめん」
だとしたらどこに……?
「なに?まさかもう新しいやつ失くしちゃったとか?」
「べ、別にそういうわけじゃないもん。……ごめん、ちょっと寝ぼけてただけ」
ふうん、とヒロはわたしを怪しむような目で見る。
「ま、早く探しときなよ。家の中にあるのは確かなんだろうしさ。んじゃぼく、サッカーの約束してるから行くね」
「あ、うん!気をつけてね」
「分かってるー」
ヒロはパンを加えながらまた出て行った。
とりあえず絨毯をめくったりソファの間も見てみたけど、スマホの姿はどこにもなく。
リビングを見渡しても見当たらない。
一人になったわたしはソファの上で頭を抱えた。
「……はぁ、どうしよう」
残された充電器だけに目をやれば、本当になくしたのかも、と頭をよぎってしまう。
でもそんなことありえないのは分かってる。ちゃんと昼寝の前にリビングの机にあげて充電した。
なのに……
「どこにもないってどういうことなんだろ」



