「──ありがとうございました」
スマホが入る紙袋を握り、携帯ショップから出て駐車場へ向かう間、わたしは鼻歌をきざんでいた。
「ふっふふーんッ」
「青空、ずいぶんご機嫌ね」
となりを歩くお母さんはそんなわたしを見て笑っていた。
「だって今日から新しいスマホだからね!ありがとう。大事にするから」
今まで使っていた子供用のスマホが少し調子悪くなり、中三になったというのもあって新しいものを買ってもらった。
高校生まで一年きってるから、いいよって。
「そうだな。使い方を間違わないように気をつけて……あぁ、暗いとこであまり見すぎてもいけないからな。後、落とさないように……落とさないようにな」
「ふふっ、分かってるよ。それも気をつける」
お父さんは一度派手に落としてこわした経験があるから、落とすなって念を押してくるんだろう。
「早々にケース決めとくんだぞ。万が一落としてもケースが守ってくれるように」
「うん、帰ったら見てみるね」
ケースはお店で買うより、色々見たいと言ってネットで探すことになった。どうせなら可愛いものを……って思うけど、高校生に向けてちょっとでも長く使えそうなデザインにしようかな、とも思ってる。
「後は買い物して帰るけど、いいのか?」
「青空は大丈夫?寄りたいところとかない?」
「わたしは平気だよ」
「それじゃ、買い物して帰るぞ」
わたしは紙袋を抱きながら、車に乗り込んだ。



