俺が桜の声を聞いたのは、「またね」が最後だった。

また、なんて存在しなかったのに。

桜は交通事故に遭った。

桜を轢いた運転手は、飲酒運転をしていたらしい。

憎くて憎くて堪らなかった。

ただの運転手の違法で、大切な人が巻き込まれるなんて。

なんで桜が死ななくちゃいけねえんだよ。

なんで、なんで。

悔しさと怒りと悲しみと寂しさが全部溢れ出してきて、この感情をどこにぶつければいいのか分からなかった。

なぁ、桜。

戻ってこいよ...。

桜は、植物の桜みたいに、綺麗になんか散っていかなかった。

残酷で堪らなかった。

もう一回、あの姿を、あの声を、見たかった。聞きたかった。

なぁ、俺さ。

桜とピンクムーンを見た時に抱いた感情がなんだったのか、分かったよ。

きっと俺は、桜のことが好きなんだ。

喪って初めて気が付いた。

今更気付いても、もう遅いのにな。

あーあ、バカだなぁ。

もう、俺、どうしたらいいのか分かんねえよ。