誰も聞いていないのをいいことに、盛大な独り言を言いながらソファに放り出していたスマホを手にする。
私が今使っているケータイ小説のサイトは三つあって、メインで住処にしているサイトを開く。
最初に登録したこのサイトが、私には一番使いやすくて好みの作品がたくさんあるんだ。
今更新を追いながら読んでいるものは夜に読もうかな。新着更新……いや、お母さんたちが帰ってくるまで時間はあるから、完結速報から見てみよう――
と、完結したばかりの作品が載せられているページを開くと、一番上に興味をひくタイトルを見つけた。
作者は鈴さん……すずさんかれいさんかな。
気になったものはとりあえず表紙を見てみよう精神でタップする。
ジャンルは青春恋愛系で、うん、これ読みたい。と素直に思った。
それまでソファに寝転がりながらサイトを見ていたけど、座りなおしてから、深く腰をかけて読むモードに入った。――ぐい、と、腕を引っ張られた感覚がした。
ページを繰る指が止まらない。次々に展開される世界に魅了されていく。
すごい――すごいものを、私は見つけてしまった。そう思った。
中編くらいの長さだったそのお話は、あっという間に読み切ってしまった。
最終ページまでたどりついた私は、しばし呆然としていた。
こんな……ことって、あるんだ……。こんな……激しく心を揺さぶられて、頭に衝撃を受けるようなお話を書ける人が、いるんだ……。
私の今までの感性を、真正面から否定されたような、そして肯定されたような、不思議な感覚にとらわれている。
読んだ相手に影響を与える作品。
今まで読んできたケータイ小説だって、私に多大な影響を与えてくれた。
今楽しく学校生活を送れているのも、ケータイ小説のおかげだ。
その中でもこのお話は、――少なくとも私にとっては――異質だった。
この作者さん、書籍化してないのかな? 呆然としているしかなかったところから立ち直って、作者さんのプロフィールページに飛んだ。
名前の読みは『すず』さんのようだ。
コメント欄には、
『読んでくださりありがとうございます。
メイン更新→『▲▲▲▲▲▲』
サブ更新→『▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲』
完結→『▲▲▲』』
と、簡単な挨拶だけだった。
書籍化作品があればリンクが表示されるはずだけど、見当たらない。まだ書籍化したことがない方のようだ。
「………」
無言で、鈴さんの過去作品を開いていた。完結済みは十作品くらい。
そして鈴さんの作品の世界に、飲み込まれ、吸い込まれていった。



