高校は地元の公立で、徒歩十五分。
電車でケータイ小説を読みながら登下校する図に憧れて別の高校も見学に行ったりしたけど、ゆっくり没頭しながら読みたい欲が勝って、一番近い高校に決めた。
合格するために、成績的にはギリギリ。
それでも、何回も何作も読んだ、憧れのケータイ小説の世界である高校に行くためにがんばった。
さすがにケータイ小説断ちをした時期もある。泣く泣く。
そのとき目標に決めたのが、高一の夏休みは全部ケータイ小説につぎ込んでやる……! ということだ。
そしていざ、今日から高一の夏休み! 終業式を終えた私は、友達に手を振って急いで帰ってきた。
高校でできた友達は、部活はばらばらで出身中学もばらばら。
私以外みんな部活に入っていて、一人で帰ることに抵抗はなかった。
家に帰って手洗いうがいを済ませて、だいぶ汗をかいちゃったから軽くシャワーを浴びて家用のノースリーブのワンピースに着替える。
両親は仕事でいなくて、兄は大学生で一人暮らしをしているから、これから私は悠々自適な時間! なんと素晴らしい響き!
お昼ご飯を食べてからゆ~っくり読もう。
更新されたばかりだろう新作様たちも気になるけど、今月の新刊は買ってあってそれから読むと決めていた。
帰ってきてすぐつけたエアコンが効きだして、リビングは居心地がいい。
私は蕎麦大好き人間なので、一人で食べるお昼ご飯はたいていお蕎麦だ。
両親も兄もうどん派だから、いただきもののお蕎麦はすべて私のものになっている。
はやる心を抑えつつ、お蕎麦をゆでている間にネギを刻んで、氷を入れためんつゆを用意する。わさびはつけない。辛いのは苦手だった。
おかずに出汁巻き玉子を作って、浅漬けきゅうりを添える。冷蔵庫に冷やしトマトがあったから、それを二切れ乗せておかずは完成だ。
ダイニングテーブルにゆであがったお蕎麦たちを並べて、「いただきまーす!」と元気よく手を合わせる。
これを食べたらどの先生の新刊から読もうかな~、と、幸せすぎることを考えながら租借していく。
そして今日のためにお茶とお菓子も用意している。
友達が誕生日にくれた紅茶の茶葉とそれに合うクッキーだ。
夏休み前の日曜日に、近くのショッピングモールのスイーツ売り場で、奮発してバラ売りのクッキーを何種類か選んで買ってきたんだ。
ケータイ小説の新刊とクッキーを買ったから今月はもうお小遣いはないけど、後悔はしていない! 友達は部活三昧の夏休みだから、八月の大会が終わるまで遊ぶ予定もなかったりするし。



