そろそろ帰ろうと、スケート靴を脱いでブレードをタオルで拭いていると、晴也先生との話を終えた晶がやって来た。
「なあ、結」
「なに」
「スケート習うって、大変か?」
「さあ……」
いつものように軽く受け流すと、晶は困ったようにその場にたたずむ。
チラッと視線を上げると、真剣な表情の晶と目が合い、思わずドキッとした。
「……だって、ほんとによくわかんないんだもん。私の場合、気づいたらやらされてたから」
小さくそう言うと、晶は、え?と聞き返してくる。
「結がやりたいと思ったんじゃなくて?」
「そう。5歳の時にお母さんに連れられて来たの。で、いつの間にかそのまま通うことになってた」
「そうなんだ。結はスケート好きじゃないのか?」
私は返す言葉に詰まる。
それを聞かれるのが一番困るのだ。
「スケートが好きなのはお母さん。子どもの頃、フィギュアスケート選手を目指してたんだって。でもどうしてもダブルアクセルが飛べなくて、バッジテストに受からなくて……」
「バッジテスト?」
「うん、検定試験みたいなやつ。ダブルアクセルが飛べないと6級に受からないんだけど、そうすると大きな大会にも出られないの。で、お母さんは叶わなかった夢を私に押しつけたんだと思う」
「そっか……」
荷物をまとめた私は、スポーツバッグを持って立ち上がる。
「変な話してごめん。あっちの女の子たちに聞いてみたら? スケートだーいすき! って言ってくれるから。じゃあね」
ひらひらとレッスン着のスカートを揺らしながら、楽しそうにウォーミングアップをしている小学生たちを指差し、私はそのまま晶に背を向けて更衣室に向かった。
「なあ、結」
「なに」
「スケート習うって、大変か?」
「さあ……」
いつものように軽く受け流すと、晶は困ったようにその場にたたずむ。
チラッと視線を上げると、真剣な表情の晶と目が合い、思わずドキッとした。
「……だって、ほんとによくわかんないんだもん。私の場合、気づいたらやらされてたから」
小さくそう言うと、晶は、え?と聞き返してくる。
「結がやりたいと思ったんじゃなくて?」
「そう。5歳の時にお母さんに連れられて来たの。で、いつの間にかそのまま通うことになってた」
「そうなんだ。結はスケート好きじゃないのか?」
私は返す言葉に詰まる。
それを聞かれるのが一番困るのだ。
「スケートが好きなのはお母さん。子どもの頃、フィギュアスケート選手を目指してたんだって。でもどうしてもダブルアクセルが飛べなくて、バッジテストに受からなくて……」
「バッジテスト?」
「うん、検定試験みたいなやつ。ダブルアクセルが飛べないと6級に受からないんだけど、そうすると大きな大会にも出られないの。で、お母さんは叶わなかった夢を私に押しつけたんだと思う」
「そっか……」
荷物をまとめた私は、スポーツバッグを持って立ち上がる。
「変な話してごめん。あっちの女の子たちに聞いてみたら? スケートだーいすき! って言ってくれるから。じゃあね」
ひらひらとレッスン着のスカートを揺らしながら、楽しそうにウォーミングアップをしている小学生たちを指差し、私はそのまま晶に背を向けて更衣室に向かった。



