氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

晶と滑る2度目の『さくらのうた』

でもね、晶。
今日はただただ幸せだよ。

どうして晶は、私の気持ちをなんでもお見通しなの?
いつの間にこんなにすてきな指輪を用意してくれてたの?

渡すタイミングも絶妙。
私、一気に気持ちが楽になったよ。

だから今、嬉しくて仕方ない。
『結、スケートってほんっとに楽しいな』
いつかの晶の言葉を思い出す。

うん、ほんとに楽しいね。
一緒に滑ると、こんなに幸せなんだね。

晶の力を借りて、私はふわっと宙に舞う。
桜の花が目の前にパーッと広がる気がした。

リンクいっぱいに咲かせよう。
私たちの幸せの花を。
どうか伝わりますように。
美しい桜が、みんなの心にも咲きますように。

晶と微笑み合い、手を取り合って滑る。
どこまでも遠くへ行ける気がした。
晶が私の身体をふわりと浮かせてくれる。
どこまでも高く飛べる気がした。

終盤のスロージャンプに向かう。

「結、ループいくか?」
「うん!」

ループジャンプは桜吹雪。
私は花びらをまとうように飛び上がる。
高く、軽やかに。

きれいに着氷すると、晶が笑顔で手を差し伸べてくれた。

「ナイスジャンプ!」

私も笑顔で晶の手を取る。
ふたりで心を通わせながらステップを踏み、幻想的な世界観を広げるようにデススパイラルを回った。

最後のペアスピンを終えると、晶は私を抱き寄せる。
フィニッシュはふたりで片膝をつき、天を仰いで高く右手を伸ばした。

桜の花びらが手のひらにふわっと舞い落ちた気がして、思わず視線を移す。
そこには、晶が私の薬指に咲かせてくれた桜の指輪が輝いていた。