氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

翌日のフリースケーティング。
私は妖精のような薄いピンク色の衣装を身にまとう。
気持ちも雰囲気も、昨日の『火の鳥』とはガラッと変わった。

ひらひらと軽やかに揺れる衣装は、袖の先のゴムを中指にかけると、手の甲にも花びらが揺れるようなデザインになっている。
私の指先から、花びらが舞うように。
そんなイメージで真紀先生が飾り付けてくれた。

「結と過ごした時間を思い出すよ。初めて会った時から今までのことを」

出番を控えてリンクサイドに並んでいると、晶が感慨深げに私を見つめる。

「ほんとだね。毎年晶と見上げた桜。晶と一緒に見られなかった年の桜も」
「ああ、そうだな。俺たちの思い出が詰まった桜を、リンクに咲かせよう」
「うん。胸いっぱいに想いを込めて」

滑走順がひとつ前のペアの演技が終わり、私たちは手をつないでリンクに下りた。
軽く動きを確認すると、晴也先生と真紀先生のもとへと行く。

「ふたりの演技、楽しみにしてるね」
「つらかったことも、幸せだったことも、全部全部スケートに乗せてこい」

はい!とふたりで返事をしてポジションに向かった。
最初のポーズを取りながら晶を見ると、優しく微笑んでくれる。

(ああ、幸せだなあ)

そんな気持ちで、私も微笑み返した。