氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

16歳の春がやってきた。
今年もきれいに咲いた桜の木の下で、私と晶はひらひらキャッチをして笑い合い、写真を撮る。

いつもと少し違うのは……。

「いくぞ、結。いちにのトウ、アップ!」

陸上でリフトをして、私は晶に高く持ち上げられた。

「わあ、桜の木がすぐそこにある! きれい」

花びらが舞う中に手を伸ばし、私はギュッとこぶしを握る。
トンと地面に下ろされてから、そっと手のひらを開いてみた。

「あ、キャッチできた!」

薄いピンク色のかわいらしい花びらが1枚、手のひらに載っている。

「よかったな、結。これからは毎年俺がリフトで持ち上げてやるから」
「うん! 来年はもっと難しいポジションでつかめるようになるね」

私たちの大切な桜の思い出が、また違った形で増えていくのがなによりも嬉しい。

(これからもずっと、晶とこの桜を眺められますように)

私は心の中でそう祈った。