氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

新幹線で新大阪に向かう間も、私は晶とペアの試合の動画を観て勉強した。

「そうだ、結。この間見つけたんだ、晴也先生と真紀先生が滑ってる動画」
「えっ、ほんと? 私、検索したけど出て来なかったよ?」
「ああ。佐藤・水沢組だと出て来ないけど、春巻きペアで検索したらあったんだ。ほら、これ」

私は晶のスマートフォンを覗き込む。
鮮明ではないけれど、映っていたのは確かに先生たちだった。

「わあ、晴也先生も真紀先生も若い!」

今の私たちより少し年上に見える先生たちが、生き生きと楽しそうに滑っている。
サイド・バイ・サイドのトリプルサルコウもきれいに揃い、スロージャンプではトリプルトウループ、そして難しい姿勢のリフトやダブルツイストも軽々と決めていた。

「すごい! 先生たちってほんとにすごかったんだ」
「うん、俺もびっくりした」

私と晶は、通路を挟んだ向こうの席で仲良さそうにおしゃべりしている先生たちを見る。
改めてふたりを尊敬し、スケートを教えてもらえることに感謝した。

「俺たちも、もっともっとうまくなろうぜ。春巻きペアを超えられるように」
「うん、そうだね。春巻きの上なら、シュウマイとか? あ、小龍包とかの方がいいかな」
「なんでだよ! 普通にゆい・あきペアでいいだろうよ?」
「でもきっと変なあだ名つけられちゃうんじゃない? それなら最初からチャーハンペア、とか名乗ったほうが……」
「一旦、中華料理から離れろ!」

そんなことを話しているうちに、あっという間に大阪に着いた。