氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

今年もスケートのシーズンが始まった。
他のレッスン生たちはどんどん試合にエントリーするけれど、私と晶は今シーズンは参戦しない。
ひたすらペアの練習をしていた。

スケーティングやサイド・バイ・サイドで行うソロのエレメンツはかなりの精度まで上がってきている。
デススパイラスも、フォワードのインサイドエッジ、アウトサイドエッジ、バックワードのイン、アウトと、合計4種類をマスターした。

ペアスピンやスロージャンプも順調に上達し、ダブルサルコウやダブルトウループ、ダブルループのスロージャンプなら、高さも飛距離もかなり質のよいものが飛べる。

「あとはやっぱり、リフトとツイストリフトね。焦らず地道に身体を作っていきましょう。でないとケガにつながるから」
「はい」

真紀先生の言葉にふたりで頷き、今シーズンはしっかりとトレーニングを重ねることにした。

オフアイスでのリフトの練習や、時にはトランポリンスタジオに出向いて感覚をつかんでいく。

リフトの種類や名前、ルールや基礎点なども勉強して覚えた。

「結。ジュニアの全日本選手権、観に行こうぜ。生で観戦したい」

11月に入ると、晶にそう言われて私も頷く。

「そうだね、いい勉強になるもんね」

去年は自分がその舞台で滑っていたなんて、なんだか信じられない。
しかも今年は晶と一緒に観戦するなんて!
考えただけで頬がニヤけてしまう。

ところが今年は大阪開催であることを思い出して困った。
ショートプログラムの翌日にフリースケーティングが行われるため、両方観るのは日帰りでは無理だ。

「どうしよう、現地で観るのはフリーだけにする?」
「でもなあ、どうせならショートもみたい。プログラムの長さや構成だって違うし」
「そうだよね。でもそれなら泊りがけになるよ?」
「俺はそうするけど、結は無理するな。フリーの日だけ来るか?」

うーん、と考えてから「お母さんに聞いてみる」と答えてうちに帰った。