氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

私たちの楽しく賑やかな日々が戻ってきた。
高校が終わると、私はすぐにリンクに向かう。

晶はスタッフジャンパーを着て、リンク内を見回りながら滑ったり、幼児教室で子どもたちに滑り方を教えたり、時にはチケットカウンターで接客をしながらバイトをこなしていた。

早朝6時からの貸し切り練習では晴也先生の指導のもと、曲かけ練習やジャンプなどを教わる。
そして急いで学校に向かった。

「結、晶、バッジテスト7級の練習始めるぞ」

すっかりカンを取り戻した晶も、スケートに向き合うと決めた私も、晴也の言葉に迷うことなく「はい」と答えた。

「ふたりとも、アクセル以外は3回転飛べてる。ダブルアクセルも問題ない。あとはクリアに下りられるように磨いていこう。一発合格目指すぞ」
「はい」

なによりも晶と一緒に練習できることが嬉しく、私は充実した毎日を送っていた。

夏休みにみっちり練習して、バッジテスト7級にふたりで挑む。
私も晶も一度で合格できた。

「よし! さすがは俺の愛弟子だ。じゃ、次はトリプルアクセルな」
「ええー!? 晶はともかく、私もですか?」

そう言うと晴也先生は「もちろん」と頷く。

「結、悔しくないのか? 晶はあとちょっとでトリプルアクセルをモノにする。練習では何度かクリアに下りてるからな。そのうち4回転の練習にも入るぞ」
「だって、それは男子だから……」

すると晶が「へへーん」とふんぞり返った。

「結がそんな理由で諦めるとは思わなかったな。素直に言えば? 晶くんががうますぎてついていけませんって」
「むーっ! なによ、そのえらそうな態度! 私だって晶に負けてないもんね。晶、ビールマンスピンできないじゃん」
「それは男だから仕方ないだろ? 女子みたいに身体が柔らかくないんだから」
「へへーん! 晶がそんな理由で諦めるとは思わなかったな」
「なにをー!?」

鼻息荒く言い合っていると、晴也先生が間に入った。

「あーもう、うるさい! ケンカならリンクの外でやれ。ほら、レッスン始めるぞ」
「はい!」

私たちはスピードを競うように、お互いにけん制しながらリンクを走り出した。