「あー、この空気なつかしい。リンクの匂いがする」
研磨を終えたスケート靴を履き、ジャージ姿の晶はリンクサイドから感慨深く辺りを見渡す。
「滑れるかな、俺。ひょうたんからやってみよう」
「あはは! 晶のひょうたん、逆に見てみたい」
笑いながらエッジカバーを外し、私は先にトンと氷に下りた。
「では晶くん、どうぞ」
「はい、行きます!」
おどけて片手を挙げてから、晶はそっと氷に片足を載せた。
左足から下りるのは、晶のルーティーン。
きっと無意識にやっているのだろうけど、それを晶の身体がちゃんと覚えているのが私は嬉しかった。
「おおー、なんかちょっと怖い。氷ってこんなにつるつるだったっけ? あっ、膝下の筋! ここを使うの、なつかしい」
「陸だと意識しないところを使うもんね。すぐ慣れるって。はい、ひょうたんどうぞ」
「よーし」
晶は真顔で両手を前に出し、両足でひょうたんを描いていく。
「おお、上手ですねえ、晶くん。その調子でリンク一周してみましょう」
「ええー? これでリンク一周なんてやってられっかよ。まどろっこしい」
そう言うと晶はスケーティングで一気にスピードを上げた。
「え、ちょっと!」
私は慌ててついて行く。
「ひゃー! 気持ちいい! これこれ、この感じ。あー、俺、生きてる!」
晶はブランクなんてみじんも感じさせないほど、リンクをのびのびと疾走した。
「晶、ほんとに一年間滑ってなかったの? コソ練してたんじゃない?」
「してねえって。身体で覚えたことって忘れないんだな。頭の中であれこれ滑り方を復習してたけど、無駄だった。ははっ」
とにかく嬉しそうに晶はひたすらリンク中を駆け巡る。
そのうちに、いつもの基礎練習のルーティーンを滑り出した。
ストローク、クロス、ターンやステップ……。
そしてスリージャンプ。
高く大きく飛んだ晶は、きれいな着氷姿勢で後ろにスーッと流れる。
「はあ、楽しい! 結、スケートってほんっとに楽しいな」
キラキラした笑顔は、出会った頃の8歳の晶のままだった。
研磨を終えたスケート靴を履き、ジャージ姿の晶はリンクサイドから感慨深く辺りを見渡す。
「滑れるかな、俺。ひょうたんからやってみよう」
「あはは! 晶のひょうたん、逆に見てみたい」
笑いながらエッジカバーを外し、私は先にトンと氷に下りた。
「では晶くん、どうぞ」
「はい、行きます!」
おどけて片手を挙げてから、晶はそっと氷に片足を載せた。
左足から下りるのは、晶のルーティーン。
きっと無意識にやっているのだろうけど、それを晶の身体がちゃんと覚えているのが私は嬉しかった。
「おおー、なんかちょっと怖い。氷ってこんなにつるつるだったっけ? あっ、膝下の筋! ここを使うの、なつかしい」
「陸だと意識しないところを使うもんね。すぐ慣れるって。はい、ひょうたんどうぞ」
「よーし」
晶は真顔で両手を前に出し、両足でひょうたんを描いていく。
「おお、上手ですねえ、晶くん。その調子でリンク一周してみましょう」
「ええー? これでリンク一周なんてやってられっかよ。まどろっこしい」
そう言うと晶はスケーティングで一気にスピードを上げた。
「え、ちょっと!」
私は慌ててついて行く。
「ひゃー! 気持ちいい! これこれ、この感じ。あー、俺、生きてる!」
晶はブランクなんてみじんも感じさせないほど、リンクをのびのびと疾走した。
「晶、ほんとに一年間滑ってなかったの? コソ練してたんじゃない?」
「してねえって。身体で覚えたことって忘れないんだな。頭の中であれこれ滑り方を復習してたけど、無駄だった。ははっ」
とにかく嬉しそうに晶はひたすらリンク中を駆け巡る。
そのうちに、いつもの基礎練習のルーティーンを滑り出した。
ストローク、クロス、ターンやステップ……。
そしてスリージャンプ。
高く大きく飛んだ晶は、きれいな着氷姿勢で後ろにスーッと流れる。
「はあ、楽しい! 結、スケートってほんっとに楽しいな」
キラキラした笑顔は、出会った頃の8歳の晶のままだった。



