氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

次の日。
午前中で終わった高校から、私は真っ直ぐ新海アイスアリーナに向かった。

電車の中から晶に『これからリンクに行くよ』とメッセージを送ると、『俺も今向かってる』と返事が来る。
私は、ふふっと笑みを浮かべてスマートフォンを握りしめた。

中学生の時は私も晶もスマートフォンを持っていなかったから、こうしてメッセージのやり取りをするのが新鮮で、なんだかこそばゆい。
それに今から会えるんだと思っただけで、胸がドキドキしてきた。

(今までなにを話してたっけ? 会ったら最初になんて言う?)

そんなことを考えているうちに、リンクに着いた。

「結!」

外の広場で桜の木を見上げていた晶が、私に気づいて笑う。
 
「晶、おはよう」
「おはよう。この桜もそろそろ散っちゃうな。今のうちにふたりで写真撮ろうよ」
「あ、うん。そうだね」

私はスマートフォンを構える晶の隣に並ぶ。
カシャッと撮影して見せてくれた晶のスマートフォンには、緊張気味にはにかんだ笑みを浮かべる私がいた。