氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

「やった! フリー進出!」

はしゃぐ私を、「いやいやいや!」と晴也先生が遮った。

「結、そこじゃない。ショート6位だぞ?」
「はい。だからフリーのプログラム滑れますよね?」
「当たり前だ、そうじゃなくて!」

晴也先生はゴクリと喉を鳴らす。

「結、ひょっとしたら、ひょっとして……」

すると、「ストーップ!」と真紀先生が晴也先生の口をふさいだ。

「晴也こそ、なに結ちゃんにプレッシャーかけてんのよ?」

そう言ってから、真紀先生は私の両手を握った。

「いよいよね、結ちゃん。ここまで来たら、私はもう何も言うことはないわ。明日のフリーでは、結ちゃんのやりたいように滑るのよ? 伝えたいことを1つ残らず全部ぶつけて」

私は真紀先生にしっかりと頷く。

「はい」
「よし! とにかく今夜はゆっくり休んで。ほら、晴也。行くわよ?」

真紀先生は、気もそぞろな晴也先生の腕を引っ張って歩き出した。