氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

「うわー、テレビ! すんごい数のカメラ!」

いよいよやってきた全日本大会の日。
会場に着くと、真紀先生が興奮気味に声を上げた。
いたる所にテレビ局のポスターが貼られ、カメラマンがあちこちで撮影をしている。

「真紀、そんなこと大声で言うな。結に聞かれてプレッシャーになったらどうする?」

いや、私、晴也先生の隣にいますけど?

「だってすごいんだもん。私たちの時代には考えられなかったよね、晴也」

ん?ちょっと待って。
さっきから晴也先生も真紀先生も、呼び捨てじゃない?
それって、もしかして?

「あの……」
「なんだ? 結。緊張してきたか?」
「違います。晴也先生と真紀先生って、恋人同士なんですか?」
「はっ!?」

ふたりは声をうわずらせて固まる。
どうやら平常心ではないところに爆弾発言をされて、取りつくろうこともできないみたいだった。

と、こんなに冷静に分析できる私は、どうやら落ち着いているらしい、とこれまた冷静に考える。

「じゃあ、着替えてきますね」
「お、おう! がんばってな」
「着替えるだけですよ?」
「うん、がんばれ!」

ダメだこりゃ、と私はスタスタと更衣室に向かった。