氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

「はあ、ついにここまで来たか」

東日本大会が終わった翌日。
いつもの新海アイスアリーナに行くと、晴也先生は感慨深く呟いた。

「なあに言ってんのよ。まだまだこれから! ね、結ちゃん」

真紀先生は明るく笑っている。
私はというと、晴也先生と真紀先生の真ん中の気持ちだった。

ついにここまで来たけど、いよいよこれからだ。
晶に今の私を見てほしい。

(スケートやめたいなんて、もう言わないよ。バッジテストだって受けた。いずれは7級も合格してみせるから)

胸を張って晶にそう伝えるんだ。
だから恥ずかしい演技なんてできない。

「すげーな、結!」

そう言ってもらえるように、最高の私でいたい。

「晴也先生、真紀先生。全日本までよろしくお願いします」

私は気持ちを新たに、先生たちに頭を下げた。

11月に開催される全日本フィギュアスケートジュニア選手権大会。
 
ショートプログラムで上位24人に入らなければ、フリースケーティングには進めない。
つまり『さくらのうた』を披露することができなくなる。
それだけは絶対に避けたい。

そのためにはジャンプとスピンの難易度を上げて、かつ出来栄え点も取らないと。
私はこれまでの試合を振り返りつつ、大会のギリギリまでブラッシュアップを重ねた。