氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

迎えた東日本選手権大会。
さすがの私も朝から緊張していた。

他の選手に交じって陸上でウォーミングアップしていても、この人強い、というのがわかる。
スニーカーでジャンプの練習をしていても、回転が速く軸も真っ直ぐで美しい。
なにより、オーラがすごい。
そんな人ばかりだった。

誰が勝ってもおかしくない。
だけど私は負けるわけにはいかないんだ。

強い気持ちで集中した。

ショートプログラムはまずまずの出来で5位だった。
問題はフリーだ。
ここで勝敗が大きく分かれる。
ノーミスでなければ。

あまり寝られないままフリースケーティングの日になる。
緊張感はどんどん高まり、衣装に着替える時には手がかすかに震えているのに気づいた。

(どうしよう、こんなに緊張するなんて初めて)

桜をイメージした淡いピンクの衣裳に身を包み、鏡を見る。
こんな女の子らしい衣装はまだ着慣れない。

(晶、びっくりするかな)

そう考えたら、なぜだか少しクスッと笑えた。

(晶に見せたいんだ、私たちの桜を)

そうだ、そのために私は滑る。

(晶、見ててね)

私は鏡の中の自分に大きく頷く。
身体の震えはいつの間にか止まっていた。