氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

陸上でのウォーミングアップを済ませた私は、滑走順と時計を確認して衣装に着替える。

ショートプログラムは、ラメ入りの黒の衣装。
髪もきっちり後ろでまとめて前髪もアップにした。

戦うんだ。
まさにそんな気持ちで挑む。

グループでの直前練習では、ダブルアクセルを何度も確認して感覚をつかんだ。
出番がやってきて、私はリンクの中からフェンス越しに晴也先生と真紀先生に向き合う。

「いつもの結なら大丈夫だ。冒頭のダブルアクセルを決めればあとは波に乗れる。最初だけ丁寧にな」
「はい」

名前がコールされ、私は晴也先生と真紀先生とそれぞれ手をつないだ。

「結、俺たちがついてる。思い切り行ってこい!」
「はい!」

拍手の中、私はリンクの中央へと勢いよく滑り出した。