氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

「結ちゃん! 一緒に練習できるなんて嬉しい」

真紀先生のプログラムが粗方できあがると、私は晴也先生のレッスンを一時的に離れ、真紀先生のレッスンに加わることになった。
女性らしい動きや、美しいエレメンツをブラッシュアップさせるためだ。

ひらひらスカートは履かないままだけど、真紀先生のレッスン生たちは私を歓迎してくれた。

「ずっと結ちゃんと仲良くなりたかったんだ。結ちゃんのスケート、すごいんだもん。男子と同じスピードで滑って、ジャンプも高いし」
「うんうん。みんなで話してたんだよね、結ちゃんといつか一緒に練習できたらなって」

そんなふうに思ってくれていたなんて知らなかった。
私は女の子らしいみんなにはなじめないと勝手に決めつけて、話しかけないでオーラを出していたから。

「ありがとう。これからよろしくね」

控えめに言うと、みんなは「うん! こちらこそ」と笑ってくれた。

「はーい、ルーティーンから始めるわよ」

真紀先生の声がして、みんなでスタート地点に着く。
真紀先生が流す音楽に合わせて、ストロークの練習から始まった。

腕の動きや身体のそらし方、顔の向きや表情など、みんなの柔らかくきれいな動きにうっとりしながらついて行く。

真紀先生が私に作ってくれたフリーのプログラムは、桜に合わせてツイズルやスパイラル、バレエジャンプ、レイバックスピンからの片手ビールマンと、ふわりと優しい雰囲気を重視した要素が詰まっていた。
私はそれをしっかり表現できるように練習しなくてはならない。

それと並行してダブルアクセルの習得、ショートプログラムの迫力あるスピードに乗った滑りも、モノにしなくてはいけなかった。
やるべきことはたくさんある。
だけど私は何があってもやり遂げてみせるんだ。
その思いは私の身体に乗り移り、どんどん技に磨きがかかっていった。