「晴也先生、これからのことを相談してもいいですか?」
レッスンの空き時間に、私は晴也先生をつかまえて切り出した。
「わかった。率直な結の今の気持ちを聞かせてほしい」
「はい。私、スケートを続けます。やめるわけにはいかない。いつかまた、胸を張って晶に会えるように」
晴也先生はじっと私の目を見て、大きく頷いた。
「そうだな。俺も全力でサポートする。めちゃくちゃうまくなって、晶を驚かせよう」
「ふふっ、はい」
まるでイタズラを思いついたみたいに、ふたりで笑い合う。
と、ふいに先生は真顔になった。
「結、晶に見てもらわないか? 結のスケート」
「え?」
意味がわからず首をひねると、先生は真剣な表情で口を開く。
「全日本ジュニア選手権に出よう。毎年テレビ放送されるから、晶も見るかもしれない」
「全日本ジュニア……、私が?」
「ああ」
まさか、と私はひるんだ。
全日本フィギュアスケートジュニア選手権大会。
文字通りジュニアの日本一を決める大会で、上位になれば世界ジュニアフィギュアスケート選手権大会へ日本代表として選出される。
フィギュアスケート選手の誰もが憧れる夢舞台で、もちろん簡単に出られるものではない。
バッジテスト6級以上を保有し、地区ごとの予選を勝ち抜かなければならない。
ここ新海アイスアリーナがある神奈川県では、まず関東ブロックを勝ち上がり、東日本ブロックを経て全日本を目指す。
「そんな、私には全日本は無理です。今の時代、ジュニアでもトリプルアクセルや4回転を飛ぶ子だっています。そもそも私、バッジテストだって5級だし……」
「バッジテストはこれから6級を取ればいい。それにトリプルアクセルや4回転を飛べなくても勝てる」
「どうやって?」
「結には、スケートで伝えたいことがあるだろう? その想いは他の誰よりも強いんじゃないか?」
「スケートで、伝えたいこと……」
そうだ、私にはどうしても伝えなければいけないことがある。
晶に、私のスケートで……。
その想いは私の心の奥深くからフツフツと湧き起こる。
気持ちのスイッチが入るのを感じた。
私は決意を込めて先生を見上げ、はっきりと宣言する。
「先生、私やります。晶に私の気持ちを伝えたいから」
「ああ、それを表現できるのは結だけだ。俺も一緒に戦う。ふたりで挑もう」
「はい!」
これまでの弱い自分はもういない。
身体中に勇気がみなぎってくる気がした。
この日から、私と晴也先生の挑戦が始まった。
レッスンの空き時間に、私は晴也先生をつかまえて切り出した。
「わかった。率直な結の今の気持ちを聞かせてほしい」
「はい。私、スケートを続けます。やめるわけにはいかない。いつかまた、胸を張って晶に会えるように」
晴也先生はじっと私の目を見て、大きく頷いた。
「そうだな。俺も全力でサポートする。めちゃくちゃうまくなって、晶を驚かせよう」
「ふふっ、はい」
まるでイタズラを思いついたみたいに、ふたりで笑い合う。
と、ふいに先生は真顔になった。
「結、晶に見てもらわないか? 結のスケート」
「え?」
意味がわからず首をひねると、先生は真剣な表情で口を開く。
「全日本ジュニア選手権に出よう。毎年テレビ放送されるから、晶も見るかもしれない」
「全日本ジュニア……、私が?」
「ああ」
まさか、と私はひるんだ。
全日本フィギュアスケートジュニア選手権大会。
文字通りジュニアの日本一を決める大会で、上位になれば世界ジュニアフィギュアスケート選手権大会へ日本代表として選出される。
フィギュアスケート選手の誰もが憧れる夢舞台で、もちろん簡単に出られるものではない。
バッジテスト6級以上を保有し、地区ごとの予選を勝ち抜かなければならない。
ここ新海アイスアリーナがある神奈川県では、まず関東ブロックを勝ち上がり、東日本ブロックを経て全日本を目指す。
「そんな、私には全日本は無理です。今の時代、ジュニアでもトリプルアクセルや4回転を飛ぶ子だっています。そもそも私、バッジテストだって5級だし……」
「バッジテストはこれから6級を取ればいい。それにトリプルアクセルや4回転を飛べなくても勝てる」
「どうやって?」
「結には、スケートで伝えたいことがあるだろう? その想いは他の誰よりも強いんじゃないか?」
「スケートで、伝えたいこと……」
そうだ、私にはどうしても伝えなければいけないことがある。
晶に、私のスケートで……。
その想いは私の心の奥深くからフツフツと湧き起こる。
気持ちのスイッチが入るのを感じた。
私は決意を込めて先生を見上げ、はっきりと宣言する。
「先生、私やります。晶に私の気持ちを伝えたいから」
「ああ、それを表現できるのは結だけだ。俺も一緒に戦う。ふたりで挑もう」
「はい!」
これまでの弱い自分はもういない。
身体中に勇気がみなぎってくる気がした。
この日から、私と晴也先生の挑戦が始まった。



