氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

翌朝。
私は制服に着替えてから1階に下りた。

「結? どうしたの?」
「学校に行く」
「ええ!?」

あれほど毎日行きなさいと言っていたお母さんが、驚いている。
私はいただきますと手を合わせて朝食を食べた。

スクールバッグと、スケート靴を入れたスポーツバッグを手に、久しぶりに登校する。
確か私のクラスは3年2組のはず。
教室の前で大きく息を吸うと、よし!と気合を入れて足を踏み入れた。

「おはよう」

その途端、ピタリとみんなのおしゃべりが止んだ。
驚いたように私を振り返り、シンと静けさが広がる。

「私の席を教えてほしいんだけど」

誰にともなくそう言うと、去年同じクラスだった女の子が我に返ったように笑顔になった。

「おはよう! 結ちゃんの席、あそこだよ。窓際の一番後ろ」
「ありがとう」

私は教えられた席に着く。
みんなは戸惑ったままヒソヒソと話しているけど、気にしない。
こんなところでくすぶってはいられない。
私にはやるべきことがある。

放課後になると、私はスケート靴の入ったスポーツバッグを握りしめ、新海アイスアリーナへと向かった。