氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

その夜。
私は寝つけずにじっと考えていた。

晶の気持ち、晶の状況。
どんなに怖くてつらい日々だったのか。
どんなに勇気を出してお母さんと家を出たのか。
そして、今どうしているのか。

「晶、ごめんね」

思わず呟くと、また涙があふれてくる。
だけど、そんな自分がイヤになった。

なんて私は甘ったれた人間なんだろう。
ぬるま湯に浸かって、あれもイヤこれもイヤと言い続けている。

晶は、学校に通いたくても通えなくなった。
私や晴也先生にも打ち明けられず、ひっそりといなくなるしかなかった。
スケートだって……。

そうだ、晶は一番大切なスケートですら諦めなくてはいけなかったんだ。
もしかしたら今も、滑りたくても滑ることができないままかもしれない。

私は?
暖かい布団の中でブツブツと文句ばかり言っている。
学校にだって行けるのに、行ってない。
スケートだってできるのに!

グッと唇を噛みしめ、私は心の中で晶に誓う。

ごめん、晶。
私、もう二度と泣き言なんか言わない。

気持ちを入れ替えるように、大きく深呼吸した。