かろうじて生きている。
そんな気分のまま、6月に入った。
ジメジメとした雨の日が増えたけど、私の気分にはピッタリだ。
そんなある日のこと。
突然、晴也先生がうちを訪ねてきた。
お母さんに「会いたくないから帰ってもらって」と伝えたのに、晴也先生は私の部屋まで来て控えめにドアをノックした。
「結? 入ってもいいか?」
「……どうぞ」
仕方なくそう答えると、カチャッとドアが開いた。
懐かしい。
晴也先生の照れたような顔を見てそう思う。
「結、生きてるか?」
「……かろうじて」
「じゃあ、これ食べろ」
そう言って先生は、コンビニスイーツを袋から取り出した。
「スケートやってるとデザートは控えなきゃいけないけど、今なら食べ放題だぞ? ほら、食べろ」
「……いただきます」
のそっとベッドに身体を起こすと、私は先生からデザートを受け取る。
ホイップとフルーツたっぷりのプリンに、思わず笑みがこぼれた。
「おいしいか?」
「はい。めちゃくちゃ」
「ははは! それはよかった。年頃の女の子だもんな、本当はスイーツも思う存分食べたいだろう? スケートやってると体重制限で、そんな普通のこともいつの間にかガマンするようになる。つらい世界だよな」
「……そうでもなかったです。だって、こんなにおいしいものだって知らなかったから」
私がそう言うと、晴也先生は笑顔を消した。
「そうか。それもまた、つらいよな」
「ううん、知らなければなんともなかったんです。だから……、知らなければよかった。楽しい時間も、知らなければよかったんです。いなくなるなら、最初から出会わなければよかった……」
うつむいて呟くと、晴也先生はしばらく黙り込む。
そして意を決したように顔を上げた。
「結、晶がいなくなった理由がわかった」
私はハッと息を呑む。
晴也先生は、目を見開く私にゆっくりと口を開いた。
そんな気分のまま、6月に入った。
ジメジメとした雨の日が増えたけど、私の気分にはピッタリだ。
そんなある日のこと。
突然、晴也先生がうちを訪ねてきた。
お母さんに「会いたくないから帰ってもらって」と伝えたのに、晴也先生は私の部屋まで来て控えめにドアをノックした。
「結? 入ってもいいか?」
「……どうぞ」
仕方なくそう答えると、カチャッとドアが開いた。
懐かしい。
晴也先生の照れたような顔を見てそう思う。
「結、生きてるか?」
「……かろうじて」
「じゃあ、これ食べろ」
そう言って先生は、コンビニスイーツを袋から取り出した。
「スケートやってるとデザートは控えなきゃいけないけど、今なら食べ放題だぞ? ほら、食べろ」
「……いただきます」
のそっとベッドに身体を起こすと、私は先生からデザートを受け取る。
ホイップとフルーツたっぷりのプリンに、思わず笑みがこぼれた。
「おいしいか?」
「はい。めちゃくちゃ」
「ははは! それはよかった。年頃の女の子だもんな、本当はスイーツも思う存分食べたいだろう? スケートやってると体重制限で、そんな普通のこともいつの間にかガマンするようになる。つらい世界だよな」
「……そうでもなかったです。だって、こんなにおいしいものだって知らなかったから」
私がそう言うと、晴也先生は笑顔を消した。
「そうか。それもまた、つらいよな」
「ううん、知らなければなんともなかったんです。だから……、知らなければよかった。楽しい時間も、知らなければよかったんです。いなくなるなら、最初から出会わなければよかった……」
うつむいて呟くと、晴也先生はしばらく黙り込む。
そして意を決したように顔を上げた。
「結、晶がいなくなった理由がわかった」
私はハッと息を呑む。
晴也先生は、目を見開く私にゆっくりと口を開いた。



