氷上のキセキ Vol.1 ~リンクに咲かせるふたりの桜~【書籍化】

その日は、晴也先生は晶につきっきりになる。
私はジャンプを飛び終えるたびに晴也先生のもとへ行き、アドバイスと次の指示を受けた。

「結、次ダブルアクセル」
「はい」

晴也先生は晶にスケーティングを教えつつ、私がジャンプの軌道に入ると注意深くチェックしてくれる。

ダブルアクセルは、まだまだきれいには飛べない。
回転が足りずに両足着氷になった私は、また晴也先生のもとに向かった。

「軸が左にずれてる。右腕だけじゃなく左腕ももう少ししっかり絞って。肩と腰のラインを意識すること。あと、バックアウトからフォアアウトに乗り換えるタイミングでもっと踏み込んで」
「はい」

ダブルアクセルはこれまでで1番の難関だった。
だけどジャンプの練習は苦じゃない。
私は晴也先生のアドバイスを受けながら、何度も繰り返し飛んだ。