校門の前には、入学式と書かれた大きな看板がある。
同じ中学で、一緒に写真を撮る約束していた友達、紗市がそこで待っていてくれた。
「あ、美羽ってば、やっと来た。もう、来るの遅いよ」
待ちくたびれたのか、綺麗にツインテールにした髪を揺らして、腰に手を当て怒っている。
短くしすぎたかと思ったスカート、紗市よりは長そうでよかった。
「ごめん。なんか色々、すごく緊張してて」
写真では見せたけど直接見られるのが恥ずかしくて、顔を手で隠す。
「そんなに緊張しなくて良いのに。写真送られたときも言ったけど、似合っているから大丈夫だって」
紗市が安心させるように見せた笑顔は、マスクが有ったときと変わっていない。
その姿を見て、緊張していた心が落ちついてきた。
「紗市と同じクラスがいいな」
「私もー。美羽と同じが良いな。ほら、写真撮って、クラス表見に行こ!」
入学式と書かれた看板の前で、沙市と一緒に写真を撮る。
スマホに写った自分の姿に違和感はあるけど、笑えている。
だから、なんとなく、これからが大丈夫だと思えた。
それでもちょっと、緊張はしているけど。
ちょっと変わった自分と、新しい場所。
ドキドキしながら、始まりの一歩目として、校門をくぐる。
その先に、――彼は居た。
黒いサラサラとした髪を揺らしながら、桜の花びらの下で彼が、私の好きな人が笑っていた。
息を飲み込む。
見間違いかと目を閉じたり開けたりをくり返す。
それでも、彼はそこにいた。
やっぱり、見間違いなんかじゃない。
マスクの下の顔を見たのは、あの日と卒業アルバムだけだったけど、一回も忘れられなかった彼だ。
心臓が早鐘を打ち始める。
ドクドクと頭の中まで響いている。
どうして、ここにいるの。
忘れられないどころか、再熱しちゃうよ。
今度こそって。



