え、何で横山くんがここに?
驚いている私と同じように、横山くんも驚いてるみたいで、目を見開いている。
「飯田さん? ここで、バイトしてるの?」
「う、うん。そうだけど、横山くんはなんでここに?」
ここは、学校の最寄り駅でも、私達の家の最寄り駅でもない駅の、駅前の端の方にある店。
外観は、純喫茶って感じで、高校生ならちょっと入りにくい感じなのに。
「よく来てるから」
「そうなんだ」
常連さんって事なのかな。
そこの店で働く事になるなんて、凄い偶然だ。
でも、学校じゃないプライベートな部分に触れちゃって、何だか気まずい。
私がいるせいで、来づらいって思っちゃったらどうしよう。
「美羽ちゃん、知り合い?」
香織さんが、後ろから声を掛けてくる。
きょとんと、不思議そうな感じだった。
「あ、はい。同じクラスなんです」
同じクラスと聞いて、香織さんは嬉しそうに笑う。
「あら、そうなの。じゃあ、美羽ちゃん、お客様のご案内よろしくね」
「はい」
そうだ。
今は喫茶店員なんだから、接客をしなきゃ。
「えっと、お一人様でしょうか。お好きな席にどうぞ」
横山くんは、慣れた様に少し奥まった席へと向かう。
香織さんから、お水とおしぼりが乗ったトレーを受け取り、横山くんのテーブルに、お水とおしぼりを置く。
横山くんは、不思議そうに私を見ていた。
そういえば、私、制服と体操服意外の姿で横山くんと会うの初めてかも。
髪だって今はまとめているし、なんか恥ずかしいかも。
そう考えると、一気に緊張して来た。
「ごっ、注文がお決まりになったら、お呼びください」
やばっ、噛んじゃった!
恥ずかしいから慌てて一礼して、席を離れる。
最初の最初から、ミスっちゃった。



