君の素顔に恋をした


「ていうか、横山くん同中だったんだ。どんくらい進展してるの?」

「……高校に入って初めて話した」

「おおぅ」


ちょっと引いている。

紗市の目が、それでも三年間好きだったのって言っている気がする。


しょうがないじゃん、話し掛けられなかったんだし。


「でもこの前のクラスマッチの時、練習の一環で手、繋いだから」

「じゃあ、それで仲良くなったの?」


仲良くなったのかな? 

紗市に聞かれ改めて考えてみる。


いや、でも……


「普通のクラスメイトだと思う。仲良しって言ってくれたけど、別にそんな感じは無いと思うし……」

「じゃあ、纏めると、好きになってから三年後に初めて話して、手は繋いだけど、仲良し度はクラスメイトレベル?」


頷く。


「連絡先は、知ってるの?」

「クラスのグループチャットがあるから……。個別に連絡したことはないよ」

「それは、仲良し度低いねぇ、でも、手繋いだことあるのか。チグハグすぎない?」


三年でそれって進捗なさ過ぎるし。

呟く紗市の言葉。


本当に、その通りだ。

やっぱり、三年間何にやらなかったのは、駄目すぎる。


「でも、三年間何にも出来なかったけど、今、一週間ちょっとで、ここまでやるなんて、頑張ってるんだね」


それは、確かに自分でも認められる。


「うん、頑張れてる」


紗市は、嬉しそうに笑って抱きついてきた。


「わっ」

「えらーい。本当に偉いよ、美羽。あの、人見知りでコミュ嫌いな美羽が、そこまでやれるなんて」

「コミュ嫌いってなに」


そんな言葉、無いよね。


「目立つの苦手、自己主張苦手、喋るの苦手に、断るのが苦手、全部ひっくるめて、人と関わるのが苦手。だからコミュ嫌い」

「別に、嫌いって程じゃないよ」

「でも、嫌なんでしょ。嫌と嫌いは同じ漢字だよ」

「知ってるけど」


あ、冷たい言い方になってしまった。

やっぱ、コミュニケーション苦手。


「ふふ」


紗市が何故か笑った。


「なんで笑ってるの?」

「わかりやすいなぁって。言い間違えたかも、やっぱ人と関わるの苦手って顔してた」


……有ってる。


バレているのが気まずくて、目を逸らしてペットボトルのお茶を飲むと、紗市は嬉しそう。


「人と関わるのが苦手な美羽が関わりたいって思える人が出来た事に乾杯だぁ」


紗市が私のペットボトルに、ペットボトルをぶつけてくる。


もー、危ないな。


「今日の放課後、どっかでお祝いする?」

「それは無理だよ。朝、話したじゃん。今日からバイト」

「あ、そっか。喫茶店だっけ? よく接客業選んだね」

「知り合いの店だから。雰囲気凄く良いし、紗市も来てね」

「うん! バイトも頑張ってね」