「で、どうなの?」


お昼の時間。

お弁当を持って、休み時間だけ解放されている屋上の隅っこに二人で座る。

紗市は意外と日焼けすることを厭わない。


紗市は、その口ぶりも、目も興味津々といった感じで、私に聞いてきた。

私は、なんてことの無いようにお弁当を開けながら答えた。


「何が」

「何がって、そりゃあもちろん。あの、朝に出会った、横、横……「横山くん」そう、横山くん!」

「横山くんが、何」


全部バレているのかも知れないけど、知らないふりしちゃう。


だって、だって、恥ずかしい。


紗市は顔を近づけると、小さな声で言った。


「す、き、なんでしょ」


ニヤニヤと悪い顔。

揶揄われるのがちょっと嫌で、むっとしてしまう。

嫌いなわけでもないけど、なんかむかついた。


紗市は私のその感情に気づいたと思うのに、余計にニヤニヤしている。


「違うの? 朝、彼に仲良しって言われたり、話したいって言われたりで、めっちゃ照れてたよ~。あれは、一目で分かった。恋してるんだなって」


うぅ、本当に全部分かってる。

あー、もう、観念するしかない。


周りの人が聞こえるくらい近くには居ないのを確認して、話す。



「好きだよ」


心の内を出すのは緊張する。

でも、紗市になら話せる。

むかつくときもあるけど、一番の親友だと思ってるし。


「ひゃー、やっぱり!?」


テンションの上がっている紗市は、立ち上がっちゃいそう。

そんな目立つことして欲しくないから、彼女に開けたお弁当箱と箸を渡し、食べながら話す。


「ずっと、好きだったの」

「ずっとねぇ、いつからなの?」


いつから、か……。

ちょっと言いづらい。


「中学の……入学式の時」


さっきよりも、もっと小声で呟くように答えると、紗市は、予想通りビックリして、冷静になっている。


「え、あん時? みんなマスクしてたよね」

「してた。してたけど、こう……一目惚れした」


紗市は考えるように空を見上げると、ため息をついた。


「そんなに、昔から? ……教えてくれれば良かったのに。親友なのにさ」


そして、拗ねるように口をとがらした。

親友なのに、その言葉が胸に刺さったので、私は目を逸らした。


「ごめん。恥ずかしくて」


紗市は、あははっと笑う。


「いいよー。だって、予想はしてたもん。美羽、好きな人出来ても言わないだろうって」


紗市は、私の事本当によく分かっている。