「飯田さん達、いつも二人で登校してるの?」

「うん。いつも一緒だよ」

「この時間に?」

「基本は、そうだね。紗市が朝練ある日は、もっと早くだけど」

「戸松さんは、運動部? 飯田さんは……何部だっけ」


うっ。

横山くんに、私が何部か覚えられて無いんだ。

私もクラスの男の子全部憶えてはないけど、ちょっとショックだ。


その間に、紗市が答える。


「私はダンス部。で、美羽は美術部」

「そうだ、美術部。自己紹介の時言ってた。美術部って朝練ないよな?」

「うん。ないよ」

「だけど、ダンス部が朝練ある日は戸松さんと登校してるんだ? 仲いいんだ」

「もう十年来の中ですから! 滅茶苦茶仲良しです」


飛びついてきた紗市を抱き留め、横山くんの事を聞いてみる。


「横山くんは、いつもどの時間に登校してるの?」

「朝練が有る時は早いんだけど、無い時はもっと遅いな、遅刻ギリギリ。でも、この時間にしよっかなー、この時間なら、飯田さんと話せそうだし」


もし、本当にそうなったら嬉しいな。

朝から話せるなんて。


「あ、でも俺居たら邪魔か」


横山くんは、紗市の方を見る。


「そんなことないよ……ね」


私は首を横に振ると、抱きついたままの紗市を見る。

紗市は、笑ってた。


「うんうん。全然気にしないから、一緒になったらよろしくねー」


電車が来て、横山くんの目がそっちに向う。

すると紗市が、ここまでの私の様子を見て何かを察したのか、耳元に口を寄せこそっと「後で詳しく聞かせてね」と言った。


紗市を見ると、ニヤニヤと笑っている。


こ、これは……バレているのかなぁ?