卒業式の日。
空は晴れていたけど、桜はまだ咲いていないのが少し寂しかった。
最後の日だし、マスクをとって良いと先生に言われたけど、恥ずかしかい。
三年間一緒だった友達の素顔も何度かは見たことあるけど、マスクが無いと、やっぱり少し違和感がある。
でも、最後にちゃんと顔を見れたのは、嬉しかった。
卒業式は、縮小する事なく盛大に行われる。
人が少なかった入学式とは違って、体育館には多くの人が居た。
内容も短縮されることはなく、粛々と式は進み、卒業証書授与が行われることに。
一人ずつ前に出て、卒業証書を受け取っていく。
小学校の時は壇上で受け取ることは出来なかったから、受け取る時は緊張した。
だけどそれよりも、もっと緊張することが、これからある。
卒業証書を受け取る為、ずっと片思いしていた彼が、私の座っている席の前を通るのだ。
私の席は、前から三番目。
しかも前の二人は身長が高くないから、前を通る人の顔はよく見える。
体育の授業の時とかにマスク取ったのを遠くから見た事あるけど、遠すぎてよく分からなかったから、実質、今が初めて見るマスクをとった彼の素顔。
ああ、どうしようドキドキしてきた。
心臓の音がうるさすぎて、他のどんな音も聞こえない。
関わることが出来なくて、これからも関わることの無い彼のことは、忘れるって決めた。
だから、これは最後の思い出。
そうやって、最後に彼の素顔を見て、いい思い出にしようと思っていたのに。
初めて見た彼の素顔に、また恋をしてしまった。
思い出にするなんて、できなくなった。



