君の素顔に恋をした


「それじゃあ、始めるよ。最初はゆっくりめに回すから、とりあえず飛べるかやってみよう」


体育委員の二人が、縄を回し始める。

さっき一人ずつ飛ぶ練習をした時より、ゆっくりと。


私達は前から二番目だから、すぐだ。


「前の二人が飛んだらすぐに行って、真ん中で飛ぼう。緊張しないで大丈夫、俺に合わせて」


横山くんが、安心させる様に笑いかける。

その顔にキュンとしちゃう。

私だけに、その顔を向けてくれるのが嬉しい。


「うん」


やばい、ドキドキしているのバレちゃったかな。

でも、ドキドキしているのは、縄跳びより横山くんと手を繋いで居るから。

それは、バレてなさそうでよかった。


ゆっくり回る縄に、前の二人が飛んで、横山くんに手を引っ張られ、私達も飛ぶ。

縄から抜け、待っている間も手を繋いだまま。


「大丈夫? 手引っ張っちゃったけど、痛くなかった?」


待っている間、横山くんは気遣う様にこちらを確認する。


「大丈夫だよ」

「それなら良かった。あ、でも、近づいてた方が腕引っ張らなくて痛くないし、引っかかりにくいから、今度飛ぶ時はもう少し近づいてほしいかも」


え、近づくって! 


驚いちゃうけど、横山くんが言っていることは分かる。


「うん。分かった」


頷くと、良かったって顔をする。

どうしよう、もっと近づかないといけないなんて。


意識して、緊張しちゃうのに、……私だけなんだろうな。


横山くんは、至極真面目、当然といったようにお願いする。

そこに、恥ずかしさとか見当たらなかった。


意識しちゃっているの私だけ、それがちょっと悲しい。

片思いなんだなって、実感させられる。


並んで待っている間、私はつい横山くんを見ちゃうけど、彼は私を見ることなく、飛んでいる人を見て、飛べた回数をみんなと声を合わせて数えていく。


こんな近くで見られるのに、見ていたいのに……。


彼から目を離して、私も飛べた回数を声に出した。