君の素顔に恋をした


市川くんが、ちりとりをゴミ箱に持って行ってくれたので、私は箒をロッカーに入れて、机を元に戻し始める。


時計を見ると、市川くんが来て十分くらいだ。

手伝って貰って良かったかも、一人だったら、後何十分かかったことか。


机も片付け終えて、市川くんに改めてお礼を言う。


「本当にありがとう、手伝ってくれて」

「別に良いよ。もし、また一人で掃除をするような事になったら、俺に言ってね。また、手伝うから」


気持ちは嬉しいけど、迷惑になっちゃうから、頷けない。

そんな私の気持ちを分かって居るのか、市川くんは、優しく喋りかける。


「一人でやるのは、大変。だけど、断るのは苦手で、俺は喋りやすいんでしょ。なら、俺を頼って。俺は、頼られるの嫌じゃないよ」


彼は、心からそう言って居るみたいで、私にはその温かな気持ちが嬉しくてたまらなかった。


「ありがとう」




美術部が終わって帰る時、体育館から声が聞こえた。

そこを覗くと、バスケ部が居る。

バッシュの音を鳴らし、ボールをついて、コートの中を駆け回っている。


……バスケ部の練習有るじゃん。


別に、時間はかかるかも知れなかったけど、一人でやれるし、手伝ってくれなくても良かったのに。

後で、お礼の連絡しとかなきゃ。