「飯田って得意科目なに?」
「家庭科と、理科かな」
「理数系?」
市川くんが意外そうにする。
「数学は苦手だよ。でも、科学の実験は楽しかったり面白いから憶えてられるの。市川くんは?」
「俺は、数学。社会とかに比べたら憶えること少ないじゃん」
二人で、話しながら掃除する。
前部分が終わったから、端から机を動かそうと窓辺に寄ったとき、外を見ると、何人かが大縄をしていた。
「あ、大縄やっている」
「放課後に練習? 偉いね」
男女両方居て、十から二十人くらい。
こんなに熱心に練習しているなら、一年生かな。
速いスピードだけど、引っかかる事無くぴょんぴょん跳んでいく。
私達のクラスより、圧倒的に上手い。
「すごい。あんなに早いのに、全然引っかかってない」
市川くんも窓辺に寄ると、真剣な目で眺める。
「本当だ。俺たちより、縄のスピードだいぶ速いのに。……アレは、縄を結構短く持って、回す二人が近いからか。俺たちも、ああした方が良いのかな」
「あんなに早くたって、飛べなきゃ駄目だよ」
窓辺から離れて箒で掃き掃除を始める。
市川くんも離れて私の後ろを、フロアダスターで拭いて行くけど、大縄の事が気になりだしたみたい。
「確かに、まずはそこからか。……飯田って、縄跳び苦手?」
「苦手」
「俺、大縄を苦手だなって思った事無いから分からないんだけど、飯田的には、どこら辺が難しいの?」
市川くん、運動神経良いみたいだからなぁ、私の言いたいことも分からないかな。
「怖いの」
「怖い?」
やっぱり分かん無かったみたいで、市川くんは、不思議そうにくり返す。
「タイミングが取りやすいのと、早さを求めるなら、前の人に続けば良いのかもしれなだけど、それが怖いの。縄や前の人に、ぶつかっちゃったらどうしようって」
あの縄って当たるとすごく痛いし、前の人に当たったら嫌な顔をされちゃう。
「それで、縄だけが回る状態になっちゃって、回されている縄に、どのタイミングで入れば良いか分かんなくなって、失敗しちゃう」



