三年間の中学校生活。
私はずっと、ダメな恋をしていた。
三年前の春は、本当に大変な時期だった。
中学に入る前から休校とか、中学に行っても分散登校とか。
去年までとは違うことが沢山有って、生徒も先生も親もみんな大変で、私も学校に行くのが不安で憂鬱だった。
だけど、二ヶ月遅れ、夏服の半袖に衣替えしての入学式の日。
私の不安も憂鬱も晴らすような出来事があった。
本来よりは縮小していたけど、新入生を全員集めて行われた、体育館での入学式。
どんな人がいるんだろうと気になって辺りを見回した時に、彼が目に入った。
さらさらとした黒い髪。
ぱっちりとした切れ長の綺麗な目。
マスク越しでもわかる、スッと通った鼻。
身長は周りの男子より少し低いけど、誰よりも姿勢が良くて、誰よりも格好良かった。
名前も、声も、性格も。
姿以外、全部知らないけど、一目見た瞬間、恋に落ちた。
その時から、学校に行くのが不安だなんて、憂鬱だなんて思わなくなった。
むしろ行きたかった。
彼に会いたかった。
それくらい、彼の存在は衝撃的で。
入学式の日以来、三年間ずっと好きだった。
……話した事は、一度もないけれど。



