「飯田さんって、入学式の後、暇?」
市川くんとの会話が続く。
「今のとこ予定ないけど、どうして?」
「中学校の同級生で同じクラスになった奴がいるんだけど、さっき話してさ。親睦会的な感じで、クラスの人誘ってカラオケ行く? って話になってるんだ」
「カラオケかぁ」
入学式は午後からで、今は午後一時前。
入学式とか、その他諸々は三時間くらいで、四時には帰れるから時間はあるけど……。
「一、二時間位で予定しているんだけど。カラオケ得意?」
「うーん。あんまり得意じゃないかな」
人前に立つのは得意じゃなくて、マイクを渡されても歌える気がしない。
私が行ったって、なんの意味もない。
むしろ、しらけさせちゃうかも。
「歌うのは強制しないから、良かったら。帰るまでに、俺か、あいつ。結城光奈」
そう言って、市川くんは一人の女の子を指さす。
巻いた髪の可愛い子だ。
あ、いいなぁ。
あの子、横山くんの隣の席だ。
「どっちかに言ってくれればいいから。行かないんだったら、わざわざ断んないで、勝手に帰ってもいいし。軽く考えて」
私は、見るからにイヤそうにしていたのか、気にさせないようにと、市川くんは笑う。
うーん、どうしよう。
人前で歌うとかすごく苦手だけど、歌わなくても良いって行ってくれたし。
市川くん話しやすいし、女の子もいるなら行ってみようかな。
自分を変えたいって思ったんだから。
結城さんが隣だから、もしかしたら、横山くんも行くかもしれないし。
勇気出すところなのかも。
「行こう……かな」
それでもやっぱりちょっと怖くて、恐る恐るといった感じになってしまう。
「いいの?」
市川くんは、気遣うように私を見る。
「歌わなくてもいいんでしょ、それなら」
「じゃあ、入学式終わったらね」
市川くんは、嬉しそうに笑った。
お母さんに連絡入れておこうっと。



