なんであんなに怒っていたんだろう。
普通に考えれば淳の態度が気に入らなかったんだと思うけれど、それにもてもやりすぎだ。
僕は倒れた椅子と机を元に戻しながら暗い気持ちになっていた。
「和彰、功介はどこに行ったんだと思う?」
「わからない。だけど頭が冷えたらきっとまた戻ってくるよ」
和彰はいつもと変わらないように見えるから、以前もこんなことがあったのかもしれない。
「心配だな」
「大丈夫。功介にはああなってしまう理由があるんだ」
「理由?」
ようやくすべての机と椅子をもとに戻してから、僕たちはベランダへ出た。
気温は高いけれど、風がふいていて心地いい。
「功介の家は親が不仲でね。いつも喧嘩ばかりしてるんだ」
「そうなんだ」
僕の親も喧嘩をするときはあるけれど、不仲というわけじゃない。
この前だってふたりの馴れ初めを聞いてうんざりしたところだった。