相手の気持ちがわからないままじゃ誠もずっと気になって仕方ないだろう。
「いや、いいんだ」
誠はそう言うとパッと顔を上げた。
ちょっと無理しているようだけれど、笑顔になっている。
「手紙にはなんて書いたの?」
「……好きな気持ちと、付き合ってほしいって書いたよ」
「それならちゃんと返事をもらわなきゃ!」
気持ちを伝えただけなら返事がなくても仕方ないけれど、付き合うかどうかの返事は必要なはずだ。
じゃないと誠はいつまでも宙ぶらりんだ。
「大丈夫だから、僕はユリちゃんを急かすつもりもないし」
「手紙をあげたのはいつ頃?」
「それは……えっと……」
記憶を掘り返すように空中へ視線を投げ出して、そのまま黙り込んでしまった。
きっと、相当前のことなんだろう。
そんな長い間誠を待たせているユリちゃんが信じられなかった。
華奢で誠実そうに見える子が、誠の気持ちを弄んでいるように感じられて腹が立った。