「何かって……?」
そう聞いてみたが、「いや、それ以外何も答えようとはしないんだよ」と繁原は答える。
「これはあくまで俺の予想だが……ヤツは誰かを庇っているんじゃないと思っている」
俺は繁原に「誰かって、誰だよ?」と聞いてみる。
「多分だけど、俺は事故当時同乗者がいたんじゃないかと思ってる」
「……なるほど」
確かに事故当時にもう一人同乗者がいたとなれば、その同乗者を犯人が庇っている可能性は充分にあるな。
「庇っている理由は?」
「まだわからない。 ただ、考えられる理由が一つだけある」
「……なんだ?」
繁原はソファから立ち上がると、おもむろに引き出しからとある資料を取り出し「これだよ」と俺に見せる。
「お前、これって……」
「多分だけど、もう一人の同乗者は……コイツじゃないかと思ってるんだ」
見せられたその資料に書かれていたのは、過去に麻薬の密売人として逮捕されていた男のことだった。
「……まさか、麻薬か?」
「この男は麻薬取引のメンバーとして七年前に逮捕されていた。……が、調べたら二ヶ月前に出所していた」
「二ヶ月前に出所?」
俺はその資料に目を通すと、繁原に「まさかお前は、この男が同乗者だと思っているのか?」と問いかける。
「いや、違う」
「違う? どういう意味だ?」
繁原は俺に向かって「俺はこの男が、本当の犯人じゃないかと思ってるんだ」と話した。
「え?……まさか、それって?」
「ヤツは、この男の゙身代わり゙として逮捕されたんじゃないかと思ってる」



