俺がそう言ったら繁原は「なんか違和感があるが。……まあ、いいか」と再びパソコンに視線を落とす。
「繁原も俺になんか相談があるなら乗るぞ」
「絶対にしないから、安心しろ」
おいおい、即答かよ……。まあいいか。
「俺、接見に行ってくるわ」
「あの例の轢き逃げの犯人か?」
「ああ。今になって急に、供述を変えたらしい」
「そうか。……気を付けてな」
繁原が接見のために事務所を出ると、俺も次の案件に取り掛かった。
✱ ✱ ✱
「三国、今日はもう終わりか?」
「ああ、ちょうど片付いたところだ」
担当していた案件が落ち着いたところで、俺も帰宅することにした。
「どうだった? あの轢き逃げの犯人」
「見事に供述を変えやがった。 今になって、自白した」
「自白? ウソだろ?」
数日前まで自分はやっていないと言っていたのに、急に供述を変えてる。
「どういうことだよ?」
「俺にもよくわからない。……一体、どういうことだろうな」
ヤツが確かに轢き逃げ事件を起こしたことには、間違いはない。
しかし逮捕されてしばらく容疑を否認していた。自分ではないと、あれだけ言い張っていたのにだ。
「ヤツはとにかく、早く起訴してくれの一点張りなんだよ。 俺がやったんだからそれでいいだろ、と俺にも怒鳴りつけてきたくらいだしな」
「……なんか、急にそんな態度はおかしいよな」
と呟くと、繁原も「ああ、明らかにおかしいと俺も思う」と呟いてソファに座る。
「ヤツは、まだ何かを隠している気がする」



