「父さん……」
「祥太、絵梨沙さんのこと、必ず幸せにしてやりなさい」
お父さんから視線を向けられた祥太くんは、驚きながらも「ああ、わかってる。……必ず、彼女を幸せにすると約束するよ」と私の手を握ってくれた。
「祥太……くん」
握られたその手は暖かくて、優しかった。
「絵梨沙さん」
「は、はい」
「こんな息子ですけど、絵梨沙さんのこと本当に大切みたいです。……なのでこれからも息子のこと、何卒よろしくお願いします」
私はお父さんから頭を下げられたので、「あ、あの、お顔を上げてください! こちらこそ……ふつつか者ではありますが、精一杯、祥太さんを支えられるように頑張りますので」と言葉を伝えた。
「祥太は私のたった一人の大切な息子です。 絵梨沙さんになら、息子のことを安心して任せられます」
「いえ、そんな……」
私はそんなに大それた人間じゃない。普通の平凡な人間だ。
だけどこんな私にも、守りたいと思う存在が出来た。 それは祥太くんだ。
だから私は、祥太くんのこと頑張って支えたいし、守れる存在になりたい。
「父さん……ありがとう」
「ちゃんと結婚する時は、婚姻届を持ってきなさい。 私が証人になってやろう」
「おい、父さん! 気が早いって……」
祥太くんがそう言うと、お父さんは「そうか?」と微笑んでいたけど、お父さんもきっと祥太くんが幸せで嬉しいんだと思う。
たった一人の大切な息子が幸せになるんだから、嬉しくない訳がないしね。
「絵梨沙さん」
「はい」



