そう答えたけど、祥太くんのお父さんは「いいから、せっかく来たんだからゆっくりしていってくれ」とリビングを出て行く。
「……なんか私、気に触るようなこと言っちゃったかな?」
さすがに心配になって祥太くんにそう聞いてみたけど、祥太くんは「いや、父さんはいつもあんな感じだから、気にするな」と言ってくれた。
「なら、いいんだけど……」
「絵梨沙は何も心配しなくていい。 父さん、あれでも嬉しそうな顔してたし」
それを聞いて「え、そうなの……?」と聞いてみたけど、祥太くんは「さっき手土産渡した時、ちょっと顔がほころんでたよ」と話してくれた。
「そ、そっか。 ならいいんだけど」
あまりにも緊張しすぎて、何を話したらいいのかも正直わからない。
「絵梨沙が気遣いのある人だってわかって、きっと関心してるのさ」
「そ、そうなのかな?」
「大丈夫。何も心配いらないから」
祥太くんが優しく手を握ってくれるから、私はそれにちょっと安心感を覚えた。
「祥太くんといると、やっぱり安心する」
「ん?」
「さっきまですごく緊張してたから、ちょっとだけ和らいだ気がする」
祥太くんが隣りにいてくれるおかげで、なんだか一人じゃないんだと思える。
「実は言うと……俺も少し緊張してるんだ」
「え……?」
祥太くんが緊張してる? 全然、そんな風に見えなかったから意外だった。
「こうやって父さんに彼女を紹介するのも、実は初めてだからさ。……ちょっと緊張してる」
「……そっか。同じだね」



