「どうしよう。なんかすごく緊張してきた……」
祥太くんは「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ」と言ってくれるけど、今日は私にとっても大事な日なので緊張しない訳がないのだ。
「まあ俺の大切な人だと紹介するだけだし、そんなに気張ることないさ」
「そういう訳にはいかないよ。 私が祥太くんの彼女として相応しいかどうか、見られるかもしれないんだよ?」
私が不安になっていると、祥太くんは「誰になんと言われようと、俺の大切な人は絵梨沙だけだよ。父さんもきっとわかってくれると思うから、大丈夫さ」と頭を撫でてくれる。
「そうだと……いいんだけど」
私は祥太くんと違って平凡な書店店員で、平凡な家庭に生まれた。 父も母も普通の人で、お金持ちでも医者でもなんでもない。
そんな私が祥太くんに釣り合う訳はないと、自分でもわかっているんだ。
「母さんにも……会わせたかったな」
そう祥太くんが呟いたのを聞こえていた私は「ねえ、祥太くん……お母さんにも会わせてくれないかな」と祥太に伝えた。
「え……?」
「祥太くんのお母さんにも手を合わせたいし、挨拶したいの」
祥太くんはその言葉を聞くと、少しだけ表情だけ柔らかくなった気がした。
そして少し微笑み「きっと母さんも喜ぶよ」と私に言ってくれた。
「そうだと、いいな」
「母さんはきっと、俺たちのこと応援してくれるさ。 母さんは結構俺には甘いからな」
「ふふふ。 そうなの?」
「ああ。きっと絵梨沙のこと気に入ってくれるよ」



