父さんはそれ以上何も言わなかった。 やはり、本当は俺には会いたくないんだなと悟った。
そして父さんは別の部屋へと歩いてしまった。
「あれ、もしかして……祥太か?」
そんな時俺に声を掛けてきたのは、俺より二つ年上で近所に住んでいた尚輝兄さんだった。
二つ年上だが仲良くしてくれていたおかげか、俺も本当の兄みたいな存在思っていたので、尚輝兄さんと呼んでいた。
「尚輝兄さん……なのか?」
「ああ。 しばらく見ないうちにイケメンになったな!」
尚輝兄さんは俺のことを覚えていてくれていて、明るく話しかけてくれた。
「尚輝兄さんは、変わらないな」
「おう。俺はずっと変わってないよ」
俺はそれを聞いて思わず「なんか、それを聞いて安心した」と笑った。
「そうそう、聞いたぞ。 祥太今弁護士やってるんだって?」
「ああ。今は志木川法律事務所ってところで働いてる」
「志木川法律事務所? おい、そこって敏腕弁護士揃いの法律事務所ってウワサだよな?」
尚輝兄さんは驚いたようにそう話した。
「お前すごいな。弁護士か……エリートだな」
「そんなことないよ」
尚輝兄さんは俺に「なあ、祥太。 お前なんで弁護士になったんだ?」と俺に問いかけてくる。
「……なんでって?」
「いや、お前のことだから、てっきり医者になるのかと思ってたんだけど」
尚輝兄さんにそう言われた俺は「医者になるつもりなんて、元々なかったよ」と尚輝兄さんに話した。
「父さんにも医者にはならないってはっきり言ったしな」



