【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。



 俺は母さんが弁護士になって喜んでくれたことが本当に嬉しくて、頑張って良かったと思えた。
 父さんが例え弁護士になることを反対しても、母さんだけは俺に「やりたいことをやりなさい」と言ってくれた。
 そんな優しい母さんが、亡くなるなんて……。まだ信じられない。

末永(すえなが)

 俺はパラリーガルの末永を呼ぶ。

「はい。どうしました?」  

「急ですまないんだが……明後日有給を使いたい」

 末永は「それは構いませんが……何かありましたか?」と聞いてくるので「今朝方、母が亡くなったと先ほど連絡があった」と答えた。
 末永はそれを聞き「そうでしたか。……わかりました」と答える。

「三国さん、ご愁傷さまです。……どうか、気を落とさず」

「ああ、ありがとう」

 俺は明後日の葬儀に参列するため、明日は早めに仕事を切り上げることにした。

「末永、俺も出てくる」

「わかりました。お気を付けて」

 末永に見送られ、俺も依頼人に会いに行くため事務所を出た。


✱ ✱ ✱


「祥太……来たか」

「……父さん」

 二日後、有給を取った俺は久しぶりに実家へと戻った。

「何年ぶりだろうな」

「……そうだな」

 父さんは俺と目を合わせようとはしなかった。 父さんの跡を継がずに医者にならずに弁護士になった俺を、きっと今も許していないのだろう。
 きっと今でも……怒っているのだと思う。

「元気にしているのか」

「ああ。……元気だ」

「そうか」