俺は母さんが弁護士になって喜んでくれたことが本当に嬉しくて、頑張って良かったと思えた。
父さんが例え弁護士になることを反対しても、母さんだけは俺に「やりたいことをやりなさい」と言ってくれた。
そんな優しい母さんが、亡くなるなんて……。まだ信じられない。
「末永」
俺はパラリーガルの末永を呼ぶ。
「はい。どうしました?」
「急ですまないんだが……明後日有給を使いたい」
末永は「それは構いませんが……何かありましたか?」と聞いてくるので「今朝方、母が亡くなったと先ほど連絡があった」と答えた。
末永はそれを聞き「そうでしたか。……わかりました」と答える。
「三国さん、ご愁傷さまです。……どうか、気を落とさず」
「ああ、ありがとう」
俺は明後日の葬儀に参列するため、明日は早めに仕事を切り上げることにした。
「末永、俺も出てくる」
「わかりました。お気を付けて」
末永に見送られ、俺も依頼人に会いに行くため事務所を出た。
✱ ✱ ✱
「祥太……来たか」
「……父さん」
二日後、有給を取った俺は久しぶりに実家へと戻った。
「何年ぶりだろうな」
「……そうだな」
父さんは俺と目を合わせようとはしなかった。 父さんの跡を継がずに医者にならずに弁護士になった俺を、きっと今も許していないのだろう。
きっと今でも……怒っているのだと思う。
「元気にしているのか」
「ああ。……元気だ」
「そうか」



