【完結】七年越しの初恋は甘く熱く、ほろ苦く。



「なんだよ、ケチだな」

「誰がお前に見せるか」

 俺はコーヒーをデスクに置くと「さ、仕事しないとな」とわざとらしく口にした。

「いつか紹介しろよ、彼女」

「は? イヤだね」

 俺が即答すると繁原は「やっぱりケチだな、お前は」と自分のデスクへと戻っていく。

「じゃあ俺、接見に行ってくるわ」

「お、行ってらっしゃい」

 裁判を控えている繁原は、接見に行くため足早に事務所を出ていく。

「三国さん、一番にお電話です」

「わかった。 お電話代わりました、三国です」

 電話を代わると、電話越しに聞こえてきたのは「祥太か。……私だ」という声だった。

「……父さん? 父さん、なのか?」

 その電話を掛けてきたのは、紛れもなく父親だった。 父さんとはあれから数年、連絡を取っていなかった。
 なのに急に電話をしてくるなんて、どういう風の吹き回しだろうか……。俺のことを見放したというのに。

「祥太……母さんが、今朝方亡くなった」

 父さんは電話越しに俺にそう話したのだった。

「……え?」

 母さんが亡くなった……? ウソだろ……。

「明後日、母さんの葬儀を執り行う。……お前も来なさい」

「……ああ、わかった」

 父さんは「場所は後でメールで送る」と電話を切った。

「母さんが……」

 母さんの体調が良くないことすら、俺は知らなかった。 母さんは俺のことをずっと心配してくれていたし、俺が弁護士になった時も、母さんは「祥太、おめでとう」と喜んでくれた。